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店のおかげか、それとも単に俺の思い過ごしだったのか美月は電話の声とは裏腹に、ご機嫌で運ばれてくる料理を口に運んでゆく。
勇気を出して誘って良かったなと思いながら、ビールで喉を潤す。
「ねぇ、彼女ともここに来たことあるの?」
急に箸を置いたかと思うと、美月が真剣な面持ちで俺に投げかけてきた。
――やっぱり優子ちゃんとのことで誤解しているのか……。
何も言ってこないものだから、安心しきっていた矢先の出来事に俺は思わず落胆してしまった。
「――彼女なんて居ないよ」
最初から優子ちゃんの名前を出しては余計に誤解されてしまうと、彼女が居ないことだけを伝える。
「え?だって……」
明らかに驚いている美月の様子からして、全てを訊かなくても優子ちゃんの事を指し示しているのが分かった。
「やっぱり、この間の見て勘違いしてたんだ……」
手に持っていた中ジョッキを置き、俺は真っ直ぐ美月を見据えた。
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