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『知ってる?中途半端な優しさって単なる自己満足で、相手にとって残酷な時があるって知った?』
数日経っても、あの美月の言葉がずっと耳の奥に残って離れなかった。
ソレはあの時の事を言っている?
それとも……
あの日、美月は俺にそう言い残し店を出て行ってしまった。
俺は美月に事の真意を訊くこともできず、その後ろ姿を見送ってしまった。
そしてまた俺は一人、悶々とした日々を過ごしていた。
「相変わらずシケた面してるな……。酒も不味くなるだろ」
久しぶりに店に顔を出したかと思うと、来た途端に挨拶のように憎まれ口を叩く優弥。
はっきり言って今、一番会いたくない人間かもしれない。
「じゃあ、余所で飲めばいいだろ?」
一応、客だと分かりながらつい本音が漏れる。
「その様子だと、やっぱり美月と何かあっただろう」
嫌味なくらい察しの良い優弥。まぁ、それが目的で店に来たことくらい俺にだって最初に分かっていた。
元々、昔から仲が良い姉弟だとは思っていたが、あれ以来特に優弥の方が美月を気にかけていたのを俺は知っていた。
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