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「ごめんなさい。もう大丈夫です」
そう言って優子ちゃんが俺から離れていったのは美月が帰って10分くらい後の事だった。
「本当に大丈夫?」
まだ涙に濡れる優子ちゃんの頬に俺が心配そうに尋ねると、優子ちゃんは「はい」と涙を拭いながら照れくさそうに笑う。
いっぱい泣いたせいか、化粧は崩れ、目は軽く腫れてしまってはいるが、心なしかスッキリとした顔つきになっているような気がした。
「なら良かった」
優子ちゃんの様子にホッと胸を撫で下ろし、ソッと離れるカウンターの方へと戻る。
「最悪ですよね、私。完全に営業妨害しちゃってましたよね」
多分さっき美月が入ってきた時の事を言っているのだろう。
「大丈夫、気にしなくていいよ。暇だったし、店を閉めようと思っていたくらいだから……」
見られた相手がユキや佐藤ならかっこうの餌食にされていたところだろうが、その心配はない。
ただ違う意味で最悪な相手に見られてしまったが、不可抗力で仕方のない事だ。
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