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その日は、すごく不思議な日だった。
いつもなら当たり障りのない会話をポツポツとしながら静かに酒を楽しむのに、どちらからともなく昔の話をし出した。
出会った頃の話。
お互いの第一印象。
昔やった、お互いのバカ話。
何で今更って思うのに、妙に盛り上がってしまった。
いくら想い起しても仲良くなるはずのない俺たちが今はこうして肩を並べ飲んでいる――すごく可笑しいな話だ。
「なぁ、前から聞きたかったんだけど、何で俺に話しかけようとなんて思ったんだ?」
それは、ずっと気になっていて、ずっと聞けずにいたことだった。
突然の言葉にユキの動きが止まる。
でもすぐに伏し目がちに笑いが漏れ、飲みかけの酒を口に運んだ。
「さぁ、何でだったかな?そんな昔の事なんて忘れてしまった」
目を細め少し遠い目をするユキに俺は呆れたように鼻で笑うしかなかった。
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