距離

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「あ、ううん……」 俺の言葉に美月は戸惑いの色を滲ませ、慌てて口を噤む。 俺の態度があからさまに冷たすぎたのかと、反省し声をかけようと顔を上げると目にいっぱい涙を浮かべた美月の顔があった。 「――美月……」 初めて見た美月の表情に息をのむ。 そんな俺に美月は更に表情を曇らせ、何かを堪えるように唇をきつく結びだす。 ――こんなはずじゃなかったのに…… 美月に、こんな顔をさせたいわけじゃなかったのに…… ふと心に、そんなことが横切り同時に何とも言えない胸の締め付けを覚える。 ごめん――咄嗟に謝りの言葉を口にしようと思った俺に美月は信じられない言葉を投げかけてきた。 「何で私には優しくしてくれないのよ!衛くんは誰にでも優しいんじゃないの!?」 その声は店中の響き渡り、全ての人の視線を集めることとなった。 こんなに取り乱した美月を見たのは、あの時以来で俺は動揺を隠せず、言葉を失ってしまった。 「――ごめん、帰るね……」 すぐに我に返った美月は俯き加減でそう言うと、まるで逃げ出すように店を飛び出して行った。 俺は情けないことに掛ける言葉も見つからず、追うこともできず、ただその場に立ち尽くし美月の背中を見送ることしかできなかった。 .
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