痛み

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「そう思いたきゃ勝手に思ってろ。俺は疲れたから、もう帰りたいんだけど」 今さら後には引けないし、ここまで来たらシラをきり通すしかない。 「ふーん、分かったよ。帰ればいいんだろ?」 意味ありげな笑みを浮かべたが、意外にもあっさりと承諾してくれた。 「じゃあ、行くぞ」 そうと決まれば善は急げと俺はすぐさま席を立ち、グラスをそのままに店を出ようとする。 背後から呆れたような、小馬鹿にしたような鼻から抜ける笑い声が聞こえてきたが、俺は気づかないふりをして歩き続けた。 「帰るならタクシー拾うけど?」 俺がカギを閉める傍らで壁にもたれる優弥に気づき手を貸そうと優弥の肩に触れる。 「女じゃあるまし……。タクシーくらい自分で止められる」 でも俺の手はいとも簡単に振り払われ、一人でフラフラと歩き出す。 「おい」 今更、酔いが回ってきたのかと思い、慌てて優弥の後を追う。 「大丈夫だから。俺の心配をするくらいなら、もっと美月の心配をしてやれよ」 自分から俺の店に来たくせに後を追う俺を迷惑そうにあしらい、言葉を投げつけてきた。 .
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