痛み

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「分かった、分かったから……。とりあえず今日は帰ろう。今度ちゃんと聞くから」 酔っ払いの相手をするのもほとほと疲れ、とりあえずこの場を何とか乗り切ろうと必死に宥め促しにかかる。 「だーから!今度じゃなくて今なんだって!何回言ったら分かるんだよ」 俺の必死の試みも水に油を注ぐだけで、状況を更に悪くするだけにすぎなかった。 ――面倒くさい。 優弥を目の前に、もう溜息しか出てこない。 「もういい、勝手にしろ!」 俺の態度に苛立ちを感じたのか優弥は吐き捨てるように言うと、そのまま俺に背を向け帰って行ってしまった。 「勝手にするも何も言っている意味が全く分からないんだけど……」 人ごみに紛れ小さくなってゆく優弥の背中を見送りホッとするかたわら胸にモヤモヤが残った。 本当は何となく優弥が言っている意味は理解していた。 ただ、それはあまりにも俺にとって好都合なもので信じがたい事だった。 何より変に期待して…… 期待し過ぎた後に、俺の勘違いでした、っていうのだけは避けたい。 でも優弥が居なくなり、一人になるとほんの少しだけ冷静に物事を考えれるようになり、ついこれまでの美月の動向を思い起こしてしまった。 .
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