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理由はどうあれ、美月が俺を心配して会いに来てくれたということは分っていた。
――しかも仕事を休んで……
多分、昨晩の事を優弥から聞いたのだろう。
優弥の事だから大袈裟に俺をボコボコに殴り倒したとでもいったに違いない。
思いだし何となく優弥に殴られできた唇の傷に触れる。
「やっぱり傷痛むの!?」
慌てた様子の美月にやっぱり、と確信が持てた。
「別に……。やっぱり優弥に聞いたんだ、昨日の事」
問題は美月が優弥にどんなふうに聞き、何を想って俺に会いに来たかということ。
案の定、俺の質問には渋い顔をしてなかなか口を割ろうとはしない。
―――じれったい……
読み取れそうで読み取れない水面下に揺れる美月の想い。
只でさえ、目の前に居る美月に触れたいという衝動に駆られているのに、触れることすら許されない。
いつもは仕事中だと、自分の心にブレーキを掛けれていたけど今は無理。
理由はどうあれ惚れた女が会いに来てくれたという、この状況で感情をコントロールできるほど俺は大人ではなかった。
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