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一瞬、自分の耳を疑った。
だって、その言葉はずっと俺の心の中にあって、一度だって美月には言ったことがない事だったから……
でもすぐに気づく。
そのことを知っているのは俺以外にただ一人で、しかもその事を美月に話せるのは、ただ一人だと。
―――優弥だ。
でもそれよりも……
そんなことよりも……
今、美月は何て言った?
『―――私は一体、いつまで衛くんの事を待っていればいいの?』
耳の奥で美月の言葉がリフレインする。
「美月はいつから俺の事を待っていてくれたの?」
信じられない気持ちでいっぱいになりながら恐る恐る美月に訊ねる。
「ずっと……。ずっと待ってた」
気づくと美月の目には涙が溢れ、頬を伝ってゆく。
「美月……」
ソッと美月の手の上に自分の手を重ねる。
一瞬、ビクリと美月の手が反応したが、躊躇いがちにゆっくりと指先が動き、そして俺の手を握り返してくれた。
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