痛み

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「いや。せっかくだから、もう少しだけ飲んでいく」 完全に帰るモードの俺とは反し、優弥はどっしりと座り重い腰を上げようとしない。 その手には、まだたっぷり酒の入ったグラス。 言われるがままにお代わりを作ってしまった自分を恨んでしまった。 でも言い出したら聞かない優弥の性格は俺が一番知っている。 俺は諦めて優弥に付き合い飲むことにした。 でも今日はいくら飲んでも酔うことができず、ただ時間だけが無駄に過ぎてゆくだけだった。 そんな俺に優弥はテンション高めにひたすら話しかけてきている。 でも美月の事が頭から離れず、俺の耳には優弥の話なんて全く入ってこなかった。 「おい!他人の話聞いてるか!?」 一向に答えない俺に優弥が軽く絡んできた。 「ああ、訊いてるよ」 そう答えてはみたが、その場しのぎのものでしかない。 「心ここにあらず、って顔をして分かりやすい嘘をつくなよ。美月の事が気になるんだろ?」 「そんなこと……」 「あるだろ?美月のことになると相変わらず嘘が下手になるな」 今の今までテンション高めに話していた優弥の表情がガラリと変わり、真顔で俺を見てきた。 ――そっちこそ相変わらず食えない野郎だな、と内心思いながら鼻で笑いグラスに残っていたお酒を一気に飲み干した。 .
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