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「大丈夫。お土産にケーキ貰って食べたから。あ、スプモーニお願いします」
まるで催促するかのように、ほんの少しだけコースターを俺の方に押しだしてきた。
「かしこまりました」
美月の行為を可愛いと思いつつ、わざとらしいくらい深々とお辞儀をして注文を受ける。
そしてグラスとリキュールを手にするとお酒を作りだす。
まさか美月がケーキを食べているなんて予想外だった。
今まで店にフードメニューは殆どなかった。
店が店だけに、訪れるお客さんのほとんどは1件目でお腹を満たし、お酒を楽しむための2件目のお店として利用されいる。
だからおつまみ程度のものは用意していたが、フードメニューは特に設けてはいなかった。
完全に私情を挟んでしまっているのかもしれないが、仕事終わりに真っ直ぐお店に来てくれる美月を見ていて最近、フードメニューを少し置こうかと考え始めていた。
その試食を美月にしてもらおうと思っていたのに、まさかケーキを食べてきていたなんて、アテが外れてしまった。
「ん?どうかした?」
ふと美月の視線に手を止める。
「ううん、何でもない」
俺と視線がぶつかり美月は慌てて視線を外し、恥ずかしそうに笑う。
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