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「ちょっと車停めますね。電話に出ないと神崎が心配しそうなんで……」
まだ笑いながら男は静かに車を脇に停めた。
ここで逃げ出すべきだろうか……
一瞬、そんなことが脳裏を横切ったが、とりあえず衛くんの電話に出るらしいから大丈夫だろうと思い直す。
「ああ、少し前に拾った。―――分かってるから……」
微かに漏れてくる衛くんの声にホッとする。
さっきまでの緊張が解れ、ピンと伸ばしっぱなしだった背筋をシートにゆったりと沈めていると
「神崎かなり心配してるようだから急ごう」
代わってもらえると思っていた電話はいつの間にか切られてて、男はまた車を走らせた。
「あ、さっきの事だけど悪いと思ったけど、少し試させてもらったんです」
―――試す?
男の言葉に私は意味が解らず首を傾げる。
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