みつき

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「初めてだったんで。神崎が俺に頼みごとなんて……」 ―――え? 「しかも迎えに行ってほしい人が居るて言われて、よくよく聞いてみたら女だっていうし。びっくりしたんですよ」 話しながら笑う男の話に私は耳を疑うばかりで、答えることができなかった。 驚く私に男は「車を出しますね」と、またゆっくりと車を走りだした。 「すみません。私がカギを無くしたせいで、迷惑をかけてしまって……」 恥ずかしい事に冷静さを失っていた閉まっていたことに気づく。 そして見るからに会社帰りの様子。 時計を見ると時間も時間で迷惑を掛けているのは明らかだった。 「いえ、気にしないでください。俺だって逆の立場だったら気が気じゃないですから」 男の言葉に反応するように顔を向けると、不意に指元で光るものに目が留まる。 「―――結婚されてるんですか?」 .
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