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「あ、はい。春には子供も生まれるんです」
子供が生まれることが、よほど嬉しいのか訊いてもいないのに嬉しそうに話してきた。
「おめでとうございます。幸せそうですね」
嬉しそうな男の様子につられて頬が緩む。
結婚。
子供。
一瞬、衛くんとの未来が脳裏を横切ったが、すぐにかすんでしまった。
彼は衛くんと同い年で、私にだって子供が居てもおかしくない年齢なのに、今の私にとって夢のまた夢。
だって衛くんと付き合っているはずだけど、いまいち現実味がないというか実感が沸かない。
衛くんは優しいし、いつだって私の事を気にかけてくれているのだって分かる。
でも女性客と話しているのを見ると不安になるし、もしかしたら私も女性客の中の、その他大勢の1人なのかもしれないって思ってしまうことがある。
仕事柄、仕方ないのかもしれないけど休みも時間も合わない。
もしかしたら私が衛くんのお店に行かなくなったら、会う事すらないのかもしれないとまで思ってしまう時があるのだ。
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