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前に来たときは……
来た、というのは正しくないかもしれない。
どちらかというと酔いつぶれて連れてこられていた、という方が正しい。
あの時は、かなり焦っていたし、朝も慌ただしく部屋を出たのもだから、あまり周りが見えていなかった。
落ち着いたというより、ちょっと殺風景な部屋。
無駄なものは置いていない感じで、あまり生活感を感じなかった。
衛くんが、まだ実家に居た頃は……
と言っても小学生くらいまでだけど、お互いの部屋を行き来していた。
当たり前だけど、あの時とはずいぶん部屋の雰囲気も変わっていて、ドキドキしてしまった。
「どうかしたか?」
気づくと傍らには衛くんが立っていて、不思議そうに私を見下ろしていた。
「ううん、何でもない」
慌てて誤魔化すと
「そ?はい、コーヒー。熱いから気をつけて」
私の考えていることをまるで見透かしているかのような含み笑いと共にコーヒーを手渡してくれた。
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