突然の告白

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「こんな朝早く、どないしたん?」 キッチンに立ちカップにインスタントコーヒーを入れ、玄関先での問いを繰り返す コーヒーの粒とカップがぶつかり合い、サラサラと音を立てた 冬の冷たい空気は、まだ暖まらない部屋の音すべてを引き立てるかのように澄んでいる あたしと慎ちゃんの息遣いまで部屋中にこだましそうだ 「早いよな…、ゴメン…」 謝ってほしいわけちゃうんやけどな… 理由が知りたいのに、何かあるとすぐに謝る慎ちゃん 優しさからくるものなんかもしらんけど、それが時々イラッとする 曖昧に言葉を濁されるんは、好きじゃない そういう自分だって、ハルに対しては素直になられへんくせに… 『人のフリ見て我がフリ直せ』 そうは思うのに、人間って自分勝手な生き物やんね… 自分の身勝手さを呪っても、素直になれないから質が悪い 「寒(さむ)ない?」 コートを脱いだ慎ちゃんに視線をやる ソファに座ってこっちを見る慎ちゃんは、微笑んで首を横に振った カウンターキッチンって、こーゆー時見られてる感が半端なくて、結構恥ずかしい 「今日な…。この後、学校の友達と一緒に旅行行くねん」 「え…?期末テストは?」 「昨日で終わり。で、今日からテスト休み」 そーなんや… 「だから、旅行行く前に話しようと思って…。ホンマ、ゴメンな」 「…えーよ、そんなん」 お湯を沸かす音に、換気扇が回るキッチン 少しだけ騒がしくなった室内に、なぜかホッとする
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