突然の告白

10/10
前へ
/45ページ
次へ
今度は、手からカップが滑り落ちそうになる 「嘘…」 「嘘か…。嘘…ちゃうんやけど…」 困ったように頭を掻いて笑う慎ちゃんに、何て言ったらいいのか分からず黙ってしまった 「迷惑…やった?」 慎ちゃんの言葉に頭を左右に振る 迷惑というか、慎ちゃんに好意を持ってもらえてたなんて、思ってもみなかったからだ 「俺…結構本気やねんけどな」 ハルが好きなはずやのに、目の前の真剣な慎ちゃんに思わず気持ちが傾いてしまう 「返事は今すぐにとは言わんから…。好きな人のこともあるやろうし………。クリスマスまでに返事ちょーだい」 そう言ってコーヒーを飲み干し、カップをテーブルに置くと『さて、行くか』と言い立ち上がった 「北海道行くんやけど、何かほしいものある?」 「あ、バターサンド!」 さっきまで気まずい雰囲気やったのに、即答している自分にハッとして恥ずかしくなる 「了解。んじゃ、行ってくるわ」 フッと笑い、『仕方ないなぁ…』って感じで頭を撫でられた 「気を付けてな」 「んー、サンキュー。行ってくるな~」 玄関先まで見送りに出ると、紫色のダウンジャケットのポケットに両手を突っ込み、ニカッと笑う お互い手を振って別れると、自分家に帰る慎ちゃんの後ろ姿をいつまでも眺め続けた
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!

64人が本棚に入れています
本棚に追加