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今度は、手からカップが滑り落ちそうになる
「嘘…」
「嘘か…。嘘…ちゃうんやけど…」
困ったように頭を掻いて笑う慎ちゃんに、何て言ったらいいのか分からず黙ってしまった
「迷惑…やった?」
慎ちゃんの言葉に頭を左右に振る
迷惑というか、慎ちゃんに好意を持ってもらえてたなんて、思ってもみなかったからだ
「俺…結構本気やねんけどな」
ハルが好きなはずやのに、目の前の真剣な慎ちゃんに思わず気持ちが傾いてしまう
「返事は今すぐにとは言わんから…。好きな人のこともあるやろうし………。クリスマスまでに返事ちょーだい」
そう言ってコーヒーを飲み干し、カップをテーブルに置くと『さて、行くか』と言い立ち上がった
「北海道行くんやけど、何かほしいものある?」
「あ、バターサンド!」
さっきまで気まずい雰囲気やったのに、即答している自分にハッとして恥ずかしくなる
「了解。んじゃ、行ってくるわ」
フッと笑い、『仕方ないなぁ…』って感じで頭を撫でられた
「気を付けてな」
「んー、サンキュー。行ってくるな~」
玄関先まで見送りに出ると、紫色のダウンジャケットのポケットに両手を突っ込み、ニカッと笑う
お互い手を振って別れると、自分家に帰る慎ちゃんの後ろ姿をいつまでも眺め続けた
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