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「もしもし、透君、大丈夫ですか?」
「ああ、ありがとうございます。もう大丈夫ですよ」
「ああ、良かった。私、心配で心配で……」
「いえいえ、ただの腹痛ですし、そんな心配することじゃないですよ」
心配してわざわざ電話をかけてくるなんて、今の世の中、他人の子供をこれほど気遣ってくれる人は殆どいないだろう。
俺は不意に、昨日の透からの言葉を思い出して、咳払いをした。
「そうだ、今日は実家が娘を預かってくれてますし、仕事帰りにそちらに寄りますよ」
「え、そんな! さすがに迷惑じゃ……」
「でも、森さんは病人食の作り方なんて分からないでしょ?」
痛いところを突かれて、思わず黙り込む。
そうこうしている間に、響子さんは半ば強引に押し切ると、そのまま電話を切ってしまった。
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