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「き、響子さん……」
透が震えた声で、私の名前を呼ぶ。
この感じ、何度味わっただろう。
いつも彼の寵愛を受けて幸せにゆるみきった顔が、私によって恐怖に彩られる様は、実にいい気味だった。
しかし、まだ足りない。
この邪魔な異物には、もっともっと恐怖と絶望をその身に刻みつけてもらわなければならないのだ。
そう、あわよくば自らその命を絶つくらいに。
「透君はさあ……何で生きてるの?」
「あ……」
恐怖に怯える透の手を強く握り、私はにっこり笑って問いかける。
――彼がいつ戻ってきても、笑顔で出迎えられるように。
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