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「これ……作りすぎてしまいまして、良かったら透君と一緒に食べて下さい」
響子さんが差し出してくれたのは、タッパーを使って丁寧に俺と透の分に小分けされたカボチャの煮付けだった。
「おお。ありがとうございます。本当に助かります」
「いえいえ。森さんも大変なんですから、無理をなさらないで下さいね」
そう言って、響子さんはニッコリと笑って去っていった。
響子さんは俺より二つ下の25歳。
そして響子さんも二年前に旦那さんを事故で亡くし、まだ小さい娘さんを女手一つで育てている。
保育園があるから大丈夫ですよ、なんて言ってはいるが、とても苦労しているに違いないのだ。
それなのに、こうやって俺を気遣ってくれる。
本当に、頭が下がる思いだ。
いつか恩返しをせねばなんてことを考えながら、俺は響子さんがくれたカボチャの煮付けを大事に鞄にしまい、会社を出たのだった。
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