天国と地獄

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「あ、まず食事を頼みましょうか」 慌てたようにメニューを開く彼の手に、私はそっと触れた。 「……先にお話をお願いします」 彼の目をのぞき込むようにテーブルを乗り出し、囁く。 触れた手から、彼の動揺が伝わってくる。 きっと胸に触れれば、早鐘を打つ鼓動が聞こえるのだろう。 しかし、今はこのまま彼の手を握りしめ、瞳を見つめ続けるのがいい。 今まで何人もの男を骨抜きにしてきた私なのだ。 ――彼だけは、絶対に逃がさない。
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