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―◇奈々美◇―
「分かりますか、皆さん。天から降り注ぐ光はかくも清らかで美しい。この世の穢れを洗い流してくれる素晴らしい光です」
今日も、陽明様の説教が始まる。
私を救い出してくれる、陽明様のお話が……
「それに引き換え、地上に蔓延する光のなんと汚らわしいことか。それは堕落と怠惰の象徴でありながら、人の心を惹きつけてやまない力を持っています」
陽明様の話は何度聞いても頷けることばかりで、一言一言が私の凍りついた心を溶かしてくれるようだった。
「たとえば、夜にギラギラ輝く繁華街の光など、一度魅せられてしまえばもはや抜け出せない泥沼へとはまってしまいます。見た目ばかりを飾りつける人間が放つ光も同様です。その光に誘惑されてしまえば、そこで人生が決まってしまうようなものです」
そう、彼もきっと色んなものに騙されて誘惑されて、道を踏み外しているんだ。
そうでなければ、私と別れるなんて言うはずがない。
救ってあげなきゃ。
私と彼の幸せな未来のために。
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