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私は迷わず、隣の部屋のインターフォンを押す。
「はい、どなたですかー?」
チェーンも掛けずに不用心に顔を出してきたのは、あからさまに世間を知らなそうなボサボサ頭の学生。
樹の隣に住んでる人間なんて、調べ尽くしてあるのよね。
「ねえ、樹の部屋に行きたいの。ベランダ使わせて? ねえ、お願い。お願い。お願い」
「は? なんなんだよ、あんた! ふざけん……」
男の言葉が止まる。
いや、正確には言葉を発することができなくなったのだ。
――私が喉に突き刺したナイフのせいで。
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