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「尾行……ですね?」
私が連絡したのは、遠山という私立探偵の事務所。
ファムのあるビルの中にも有名な探偵事務所があったはずだが、あそこでは近すぎて知人とあってしまったりする可能性もある。
だから私は、敢えて車を飛ばして数駅離れた探偵事務所を訪ねたのだ。
まあ最も、寂れて仕事を選ばないところを選んだという理由もあるのだけど。
「ええ、稲垣香澄。この子をしばらく尾行して欲しいの」
差し出した写真を、無骨な手が受け取る。
ご丁寧にスーツなど着込んではいるが、無精ひげや整っていない髪の毛など、身なりのだらしなさは一目瞭然だ。
なるほど、これでは仕事が来ないのも頷ける。
ま、私にとってはその方が都合がいいのだけど。
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