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不意に、部屋の扉が開く。
顔を上げると、今日来ていた会社の人が、にっこり笑いながら立っていた。
「透君……だよね? 私、七瀬奈々美。会社で透君のパパにお世話になってるの、よろしくね」
七瀬さんの言葉に、僕は無言で顔を背けた。
深い意味はない。
今は誰とも話したくない気分だった。
「こら透。ちゃんと挨拶しないと……」
「あ、いいんですよ。少し、透君と二人でお話してもいいですか?」
「ああ、別に構わないよ。透にとっても、気分転換になるだろうし」
気分転換なんかできるもんか。
そう思ったけど、口には出さない。
また、迷惑をかけちゃうから。
「ありがとうございます。ね、透君。ちょっとお姉さんとお話しようか?」
七瀬さんが、僕の頭を優しく撫でて、微笑む。
――なんだか、ママみたいだな。
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