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そうだ。この感覚なのだ。
怒り、不快感、それら負の感情を超越したところに在る確かな昂ぶり。
ぬるま湯に浸かりきっていた俺はここ数年そんな感覚を忘れていたのかも知れない。
今の俺は、何不自由ない生活を送ることが出来ている。
昔の俺とは、天と地の差だ。
しかし、その安寧の先に何があるというのだろう。
無難に幸せな人生を過ごし、ぬるま湯の中で生涯を終える。
その最期の瞬間、俺は満たされているのだろうか。
否。満たされようはずが無い。
人は、自らを燃やし尽くしてこそ大往生といえるのだ。
ならば、私も進もう。
安定の破壊。ぬるま湯の終焉。確約された未来の瓦解。
それら全てが、俺の胸を躍らせる。
そう、人間にとって幸福とは最も解き難い鎖なのだ。
縛り付けられていることにも気付かず、ただ漫然とした人生に縛り付ける鎖。
俺はもう迷わない。
――俺はもう、自由なんだ!
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