悪魔の来訪

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  「……ん?」 不意に、ドアをノックする音が響く。 珍しい、依頼人かな? 俺は机に広げていた資料をしまうと、ゆっくりと扉に向かう。 依頼がなければ、他のことに関わる余裕もなくなってしまう。 今は、仕事を選べる立場じゃないのだから、どんな依頼でも嬉しいのだ。 そう思い、襟を正す。 人間は第一印象が大事だ。 信頼できる探偵だと思われるよう、気を使わなければならないな。 「いらっしゃいませ、遠山探偵事務所……っ!?」 しかし、扉を開けた瞬間に、俺の思考は全て霧散した。 なぜなら、目の前に立っていたのは―― 他でもない、矢部響子だったからである。
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