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「ま、いいわ。せっかくだから今日は色々お話しましょ。私も、たまには素の自分で話せる相手が欲しいのよね」
「お互い、仮面を被り続けるのは息苦しいものだな。では、今夜をたのしみにしているよ」
軽く挨拶を交わして、電話を切る。
これで、響子に話を聞く口実ができた。
まあ、できれば本当に完全なプライベートで話したいのはやまやまなのだが、仕方ないだろう。
俺は、子供だからといって油断することはないし、情けをかけることもしない。
獅子は兎を殺すにも全力を尽くすというが、その言葉の裏には自分が獅子であるという慢心がある。
自分が絶対なる強者であると認識した上で、格下の兎にも全力を尽くすという、いわばパフォーマンスに等しい喩えなのだ。
さっきまでの俺は、まさその獅子だった。
しかし、響子と話すことで、人は力など無くても充分に強くなれるのだということを思い出した。
俺はもう、慢心しない。
透は大人顔負けの天才だという。
ならば俺もありとあらゆる手を尽くし、策を弄し、始末してやろう。
最後に笑うのは、この俺だ。
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