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「……じゃ、僕は行くね」
ひとしきり泣いた後、僕は一言呟いて、お墓を後にした。
響子さんにまんまと操られて、ママとカナちゃんを殺してしまった僕ができる償いはただ一つ。
響子さんを殺すことだ。
僕はママとカナちゃんを殺した。
だからもう、他に何人殺そうと構うもんか。
ポケットの中を確認する。
そこには、折りたたみ式のナイフ。
百円ショップで買った安物だけど、きちんと砥いであるし、人を一回刺すくらいなら問題ないだろう。
証拠に、取り出してみれば日の光に当てられてギラギラと鈍い光を放つ。
もちろんこれを、むやみやたらに振り回して響子さんを殺そうとは思っていないし、そんなんであの女を殺せるとも思っていない。
でも、もしあの女が、僕の前で致命的な隙を見せたときには、迷わずこのナイフで喉元を掻っ切ってやる。
今日は天明教のパーティーだから響子さんと会う機会は無いかもしれないけど、携行しておいて損はない。
チャンスもピンチも、いつ訪れるか分からないんだから。
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