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ただただ耳を澄まし、息を潜める。
幸いこの場所は、上からも位置を把握しにくい。
僕の居場所さえ気付かれなければ、先手を取れるはずだ。
だけど、僕はすぐに知ることになる。
――その認識が甘かったことに。
「――!? なんだ、この音……」
研ぎ澄ました聴覚が捉えたのは、遥か頭上で何かを引きずる音。
その意味を知った瞬間、僕は慌てて駆け出した。
「うわああっ!」
先ほどまで僕がいた位置で、激しい音を立てて巨大な花瓶が砕け散る。
水の満たされた、僕の身体ほどもある花瓶。
当たれば間違いなく命は無かった。
――どこから、どこから落としたんだ?
焦る心は、何の答えも導き出してはくれない。
しかし、そんな僕に対して、見えざる敵はあくまでも非情だった。
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