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「ああっ!」
陽明が投げつけてきたのは、大きなクッション。
各階の階段脇に設置されていた椅子から、はぎ取ったもののようだった。
僕の進行方向に投げられたクッションは、僕の転がっていた勢いを殺してしまう。
その隙に、陽明の腕が僕の身体を持ち上げた。
「さすが、手こずらせてくれたな」
ニヤリと口角を吊り上げる陽明。
スタンガンを持っていた右手はガッチリと掴まれてしまっている。
――ならば!
「うわあああああ!」
すかさず、左手にナイフを構え、陽明に切りかかる。
「ふん、一度見たものにやられはしないさ」
しかし陽明は、簡単に僕の腕を振り払う。
僕の手から離れ、遠くに落ちたナイフが、悲しい金属音を響かせた。
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