決着、そして暗転

6/19
前へ
/36ページ
次へ
「ああっ!」 陽明が投げつけてきたのは、大きなクッション。 各階の階段脇に設置されていた椅子から、はぎ取ったもののようだった。 僕の進行方向に投げられたクッションは、僕の転がっていた勢いを殺してしまう。 その隙に、陽明の腕が僕の身体を持ち上げた。 「さすが、手こずらせてくれたな」 ニヤリと口角を吊り上げる陽明。 スタンガンを持っていた右手はガッチリと掴まれてしまっている。 ――ならば! 「うわあああああ!」 すかさず、左手にナイフを構え、陽明に切りかかる。 「ふん、一度見たものにやられはしないさ」 しかし陽明は、簡単に僕の腕を振り払う。 僕の手から離れ、遠くに落ちたナイフが、悲しい金属音を響かせた。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

33人が本棚に入れています
本棚に追加