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「さて、俺の勝ちだな」
陽明がポケットからナイフを取り出す。
僕の持ってるようなチャチなものじゃない。
闇を切り裂くように鈍い光を放つ、鋭いバタフライナイフだ。
「何か言い残すことはあるか?」
「もういいよ……好きにして」
陽明の言葉に、僕は小さく呟く。
身体もボロボロで万策も尽きた。
僕にはもう、何もできない。
やっぱり、大人に勝つなんて無理だったんだ。
ごめんね、みんなの仇取れなかった……。
ごめんね……。
「そうか、なら終わりにしよう。……死ね!」
陽明が、ナイフを振り上げる。
絶望に満ちた僕の言葉は、陽明に安心感を与えただろう。
そう、殺したければ殺せばいい。
好きにすればいい。
好きにすれば……
なーんてね!
「死ぬのは、お前だっ!」
「えっ……!?」
僕はすかさずポケットから鉛筆を取り出す。
陽明は事態を把握できずに驚愕の表情を貼り付けたまま固まっている。
その一瞬の隙をついて、僕は鋭く削られた鉛筆を、陽明の喉元目指して振り下ろした。
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