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「フフッ! なかなかサマになってるじゃない」
「……当然だ。ちょっと前までは毎日のようにスーツを着ていたんだからな」
あれから俺たちは、まずホテルで風呂に浸かり、身だしなみを整え、そのまま朝を待った。
そして響子が用意してくれていた簡単なジーンズとTシャツを着て街に出て、まずは正装を買うのだと、近くの衣料品店にやってきた。
何着もとっかえひっかえスーツを着せられるのはさすがに疲れたが、汚らしい格好で満足していた自分の意識を改めるためにも、これは必要なことだと思った。
「うーん、さっきのが一番いいかも知れないわね。着心地はどうだった? あなたが無理して着てたら結局不恰好になっちゃうんだから、遠慮なく言ってね」
「いや、どれもかなり良いブランドのスーツだろう? 着心地は良かったよ。さっきのスーツで大丈夫だ」
「オーケー! それじゃ、これお願いしまーす!」
店員にスーツを手渡す響子の姿はどう見ても普通の若い女性そのもので。
昨日、悪魔のような雰囲気を纏っていた女と同一人物だとは思えなかった。
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