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ただがむしゃらに走りつづけ、辿り着いた先は自らの実家だった。
インターホンに手を添えて恐る恐る後ろを見れば、もう誰もいない。
先ほどの〝アレ〟は一体なんだったのだろうか。
幻覚にしても、おかしい。
幻覚とは、本人の精神から生まれるもの。
初恋の少女があのようなおぞましい姿で現れる幻覚など、見てしまうわけがないのだ。
そこまで考えて、かぶりを振る。
もう忘れよう。
自分は、何も見なかったのだ。
無理やり、自分の恐怖を押し込めて深呼吸をする。
――その瞬間、大石の肩が力強く掴まれた。
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