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「うわああああああ!」
腹の底から声を出して、大地に転がる。
勢い余って、扉に頭をぶつけうずくまる。
そんな無様な彼の耳に飛び込んできたのは、懐かしい声だった。
「なんだ、そんなにおどろかなくったっていいじゃねえかよぉ」
「お、親父!?」
痛む頭を押さえて見上げれば、そこには十年ぶりに出会う肉親の姿があった。
色黒でがっしりとした、いかにも職人という形容が正しかったその風体は、髪に白髪が混じるようになって更に渋みが加わっている。
「ほれ、大丈夫か?」
差し伸べられた手を握り、立ち上がる。
久しぶりに握り締めた父親の手は、大きくて力強くて、暖かかった。
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