消された少女

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  「た、ただいま……」 緊張した様子で扉を開け、門をくぐれば、懐かしい家の空気が鼻腔から流れ込んでくる。 木と、僅かなショウノウの香り。 街は変わっても、この家だけは変わらずあることを、大石は嬉しく感じた。 「おかえり。大きくなったねえ」 不意に話しかけてきたのは、痩せたメガネの女性。 彼女こそが、大石の母親である大石遥香だった。 「ああ、ただいま。ごめんね、ずっと家を空けちゃってさ」 「いいんだよ、もう。さ、ご飯作っておいたから食べちゃいなさい。どうせあんたのことだから、すぐに友達の家に行っちゃうんだろ?」 完全に見抜いている遥香に苦笑いで返す。 話すことはたくさんある。 だけど今は、とうもろこし畑の少女について聞きたかった。 両親は、一度だけ彼女に会ったことがあるのだ。 大石の他に彼女を知る唯一の存在。 それが岩男と遥香なのであった。
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