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「ま、うちにも少しくらいは貯金はあるからさ。あんたも焦らずゆっくり探しなよ」
母親の言葉に、大石はしっかりと頷く。
今まで胸の中で凍り付いていたものが、ゆっくりと溶け出していくような気がした。
「おっと、そろそろ友達のところに行かなくていいのかい?」
「あ、そうだ!」
時計を見た大石が、慌てて立ち上がる。
時刻は、先ほど皆と別れてから一時間半後を示していた。
「親父、母さん、ありがとう! こっちでも頑張るよ!」
笑顔で頷く両親を尻目に、大石は家を飛び出していく。
携えるのは、一本のギターのみだった。
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