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「おおー、懐かしいなー!」
フェリーが銀杏島に到着する頃には、既に太陽が真上に昇っていた。
懐かしい景色を見渡し、大石が感嘆の声をあげる。
先ほど感じた嫌な視線など忘れてしまうほどに、故郷に帰ってきた開放感は大きかった。
「この辺は昔のままだよな。でも、この島もお前が行ってから結構変わったんだぜ」
子供のようにはしゃぐ大石をからかうように、木村が口を挟む。
それに被せるように、彩芽も口を開いた。
「大石君が行ってから、この島をリゾート地にしようっていう動きがあってね。色々と開拓されたのよ」
「へえ、そうなのか」
「ああ、大き目の駐車場ができたり、マンションが建ったりもしたな」
「マンション? こんな狭い島にそんなもん建ててどうするんだ」
「都会の暮らしを離れて悠々自適な生活を送りたい人が移住してきたりするらしいわよ。リゾート地……とまでは行かなかったけど、島の人口自体は結構増えたし、取り組みとしては成功だったんじゃないかしら?」
木村と彩芽の話は、大石にとって驚くべきことだった。
いつまでも変わらないままの故郷であって欲しい気持ちは勿論あったが、変わっていかなければ廃れてしまうということも分かる。
いずれにせよ、自分を迎えてくれた島は、昔過ごしたものとは大きく様変わりしているであろう事は事実であるようだった。
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