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「遅いぞー、大石!」
予定の時間に一時間近くも遅れて駅へと到着すれば、早速木村から洗礼を受ける。
「ごめんごめん! 悪かったって!」
木村にグイグイと首を絞められながら、大石が謝罪の言葉を叫ぶ。
その様子を見て、榊原が大声で笑い始めた。
「まあまあいいじゃないか! 大石だって家族と会うのは久しぶりなんだろう。積もる話があって当たり前じゃないか! そうだろ、大石?」
「あ、ああ……」
榊原の勢いに負け、つい首を縦に振ってしまう。
本当は、自分が両親に対してあの少女についての質問をしたことが遅刻の遠因となっていたのだが、それを話す必要はないだろうと思った。
「ま、でも連絡くらいは欲しかったわよね」
「ううん、ご両親とお話していたら時間を忘れるのも仕方ないんじゃないかな」
彩芽の苦言に、詩織がすかさずフォローを入れる。
その瞳には、自分でも気付かぬうちに敵対心がにじみ出てしまっていた。
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