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「へえ、本当に変わったんだなあ」
揺れる電車から見た景色は、大石にとって驚くべきものだった。
のどかな田舎風景が広がっていたはずの島内は、ところどころ灰色のアスファルトに浸食されていて、巨大なマンションやショッピングモールの姿も見える。
大石のいた東京には遠く及ばないものの、それは確かに〝都会〟の様相を呈していて。
せっかく逃れてきたのに、都会という魔物は懐かしい故郷までをも食い尽くしてしまうのか。
そんな憤りを覚えるのも仕方がなかった。
「あれ……?」
不意に、ちょっとした違和感を覚え、大石が声をあげる。
先ほどまで軽快に走っていた電車が、急に減速したのだ。
「ああ、ここに来ると何故か減速するんだよ。車掌さんに聞いても『安全のため』としか答えてくれないんだ」
榊原の言葉に、大石が首を傾げる。
遠くに見える目指す駅が、もどかしく感じた。
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