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「そういえば、ここに来る途中に『大石鉄工所』って名前の鉄工所をみたが、あれはお前の実家か?」
「え、ええ。まあ……」
大石の返答に、笹見は大きく頷いた。
「ようし、これで全てが繋がった。今から俺が言い当ててやるよ。お前の昨晩の行動をな」
笹見の瞳が、ぎらぎらと刃のような輝きを放つ。
それは、見つめられたものの口を即座に塞いでしまうほどの威圧感を持っていた。
「まず、お前は昨晩の集まりの帰りに、こっそり伊藤詩織の後をつけて家を調べたんだ。彼女の家に侵入し、襲う計画を立てるためにな。久しぶりに会った同級生が美しい大人の女性になってたもんで、ついムラムラきちまったんだろう」
「ちょっと! あんたなにを……」
「そして! 伊藤詩織が一人暮らしだと知り、犯行を実行した。実家の鉄工所から、ドリルか何かを持ち出して、彼女が寝ているであろう深夜に侵入を試みたんだ」
ばかげている、と大石は思った。
いくら深夜とはいえ、ドアに大きな穴を空けるような工具を用いれば、少なくとも詩織には気づかれるだろう。
そんな馬鹿げた理論が成り立つはずがない。
この刑事は、まるで自分を犯人に仕立てあげようとしているような気がする。
いや、恐らく自分でなくても構わないのだ。
誰でもいいから、犯人を作り上げようとしているのではないか?
だとしたら、何のために?
黒い疑念が、外から内から大石を締め上げていた。
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