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「だが、不運にも伊藤詩織は起きていた。勿論、お前も寝込みを襲うつもりだったにしろ、顔を見られないように覆面くらいはしていただろう。被害者にしてみれば、覆面の男がいきなり入ってきたんだから、抵抗はするよな?」
「ま、まあそれはするでしょうね」
「その時、詩織は慌てて助けを呼ぼうとした。このレベルの緊急時なら、警察に電話をするより、知り合いの方がすぐに話が伝わる。そう思って彼女が助けを呼んだのが、お前なんだよ」
笹見が、大石の表情をのぞき込むように距離を詰め、勝ち誇った笑みを浮かべた。
「その瞬間、お前の携帯が鳴ったわけだ。驚いただろうな、まさか目の前の不審者が友人だったなんてな。お前は慌てて、思わず着信履歴を消したが、もう完全にバレてしまった。だから、こう思ったんだ。――この女を殺すしかないと」
「ふざけないでよ!」
刑事の言葉が終わった瞬間、間髪入れずに怒声が放たれる。
その声の主は、先ほどまで突っ伏して泣いていた佐和子だった。
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