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「実は、詩織ね。大石君のこと好きだったのよ。だから私、昨日アドバイスしたの。『告白しちゃいなよ』って」
佐和子が、搾り出すように言葉を紡ぐ。
悲痛な声で、しかしはっきりと。
「それであの子、昨日の夜に私に電話してきたの。きちんと告白したって。返事は明日分かるって。そうよね、大石君?」
佐和子の言葉に、大石がはっきりと頷く。
「だから、大石君が詩織を襲ってやろうなんて考えるはずないのよ! だって、詩織は大石君と恋人になろうとしてたのよ? 分かるでしょ!」
佐和子の訴えはもっともなものだった。
大石も詩織も、大人の男女なのだ。
わざわざ襲ったりしなくても、付き合っていれば、いずれそういう機会は訪れる。
その選択権を所持していた大石が、詩織の身体目当てで蛮行に及ぶはずが無いのだ。
しかし、当の大石はどこか複雑そうな表情を浮かべていた。
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