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「だから、大石君は……」
「もういいよ、ありがとう、佐和子。これ以上は詩織が可哀想だ」
なおも食って掛かる佐和子を、大石が優しく遮る。
庇った人間に話を止められ、状況を飲み込めない佐和子に代わって、大石が口を開いた。
「刑事さん。俺は間違いなく潔白です。でも、ここで駄々をこねて捜査を遅らせたくはありません。俺に協力できることなら、全面的に協力します。だから、必ず真実を暴いてください」
「言われなくても、全力は尽くすさ。んじゃ、お言葉に甘えて同行してもらおうか。指紋やらなにやら、色々と提出してもらいてえものがあるからな」
笹見の言葉に、大石が頷く。
何を調べられてもやましいことは何一つ無い。
だから、大事な友人が命を落とした場で騒ぎ立てる必要など、無い。
悲しむ暇も与えられずに流れる現実に、胸の奥はずきずきと痛むばかりだった、
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