40人が本棚に入れています
本棚に追加
「なに……なんなの?」
詩織が恐る恐る湯船からあがり、火照った裸身を隠すようにバスタオルを巻く。
チャイムの音は、絶え間なく鳴り続けている。
間の抜けた機械音が、間断なく詩織の耳朶を揺らす。
得体の知れない恐怖が、そこにはあった。
――バンッ!
「ひっ……!」
不意に、鳴らされ続けていたチャイムの音が、激しく扉を叩く音に変わり、詩織がビクッと身を震わせる。
緑に塗られた重い鉄製の扉が、大きく揺れているのが見える。
――バンッ!
――バンッ!
呆然と見つめる詩織の不安を他所に、扉はひたすらに叩かれ続ける。
詩織はバスタオル姿のまま、ガタガタと震えていた。
「なによ……なんなのよ……」
扉を凝視したままカニのように横向きに移動し、携帯電話を手に取る。
そして、意を決すると、音を立てないようにゆっくりと、叩かれ続ける扉に近づき、ドアスコープを覗いた。
最初のコメントを投稿しよう!