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「ふう……」
自室に帰り着いた笹見は、ソファに腰掛けると大きく息を吐いた。
この部屋は、伊藤詩織が殺害されたマンションの別フロアのもの。
つまり、彼女の部屋と間取りは同じなのだ。
玄関から何者かが侵入し、彼女は今ちょうど笹見が座っているあたりまで逃げて、そこで殺害された。
殺害方法や侵入方法などから、人間の手で行うには無理がある犯行とも思われるが、実際に指紋は残っているのだ。
果たして、この状況が意味するものはいったいなんなのであろうか。
白髪交じりの頭を掻きながら、笹見は一人思案に暮れていた。
「ん?」
不意に、背広に入れていた携帯電話が揺れる。
ディスプレイには『中川』の文字。
一人で調べている彼が、何かを掴んだのだろうか。
少しの期待を胸に、笹見は通話ボタンを押した。
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