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「はい? なんでですか? 車の中には誰もいませんよ?」
中川の言葉に、笹見が思わず身を震わす。
――聞こえるのだ。
中川の声に混じって、幼い少女の笑い声が。
どうすればいい?
どうすれば、部下を救える?
得体の知れない者が、部下の命を狙っているのだ。
笹見はとにかく立ち上がり、携帯を耳に当てたまま、素早く部屋を出る。
「中川! 今、どこにいる!?」
「はい? もうすぐそちらに着きますよ。それより、例の件ですが、やっぱり事故は事故だったんですよ。ただ、リゾート計画が」
そこまで話して、通話が切れる。
中川が切ったわけではないだろう。
では、誰が……
「くそっ! 中川――っ!」
笹見が転がるように車に飛び乗り、エンジンをかける。
もはや一刻の猶予もなかった。
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