新たなる惨劇

5/9
前へ
/32ページ
次へ
「はい? なんでですか? 車の中には誰もいませんよ?」 中川の言葉に、笹見が思わず身を震わす。 ――聞こえるのだ。 中川の声に混じって、幼い少女の笑い声が。 どうすればいい? どうすれば、部下を救える? 得体の知れない者が、部下の命を狙っているのだ。 笹見はとにかく立ち上がり、携帯を耳に当てたまま、素早く部屋を出る。 「中川! 今、どこにいる!?」 「はい? もうすぐそちらに着きますよ。それより、例の件ですが、やっぱり事故は事故だったんですよ。ただ、リゾート計画が」 そこまで話して、通話が切れる。 中川が切ったわけではないだろう。 では、誰が…… 「くそっ! 中川――っ!」 笹見が転がるように車に飛び乗り、エンジンをかける。 もはや一刻の猶予もなかった。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

33人が本棚に入れています
本棚に追加