新たなる惨劇

7/9
前へ
/32ページ
次へ
  開ききった窓から、一本の細い腕が伸びる。 長く黒い髪を振り乱した少女が、ゆっくりと顔を出す。 その首は、無残にも折れ曲がっていた。 「ん……?」 何かが大地に落ちる音を聞き、中川が怪訝そうに様子を窺う。 助手席の方を覗くも、何も無い。 首をかしげて、エンジンチェックに戻る。 相も変わらず、異常はない。 諦めてボンネットを閉じようとしたその瞬間、ただならぬ気配を感じた。 ――なにかが、いる。 恐る恐る足元を確認する。 暗がりで何も見えないが、何かがそこにいるような、そんな気がした。 口の中が乾く。 鼓動が、早くなる。 意を決した中川は、ついにゆっくりとしゃがみこみ、車の下を覗き込む。 ――その瞬間、二本の細い腕が中川の首に絡みついた。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

33人が本棚に入れています
本棚に追加