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開ききった窓から、一本の細い腕が伸びる。
長く黒い髪を振り乱した少女が、ゆっくりと顔を出す。
その首は、無残にも折れ曲がっていた。
「ん……?」
何かが大地に落ちる音を聞き、中川が怪訝そうに様子を窺う。
助手席の方を覗くも、何も無い。
首をかしげて、エンジンチェックに戻る。
相も変わらず、異常はない。
諦めてボンネットを閉じようとしたその瞬間、ただならぬ気配を感じた。
――なにかが、いる。
恐る恐る足元を確認する。
暗がりで何も見えないが、何かがそこにいるような、そんな気がした。
口の中が乾く。
鼓動が、早くなる。
意を決した中川は、ついにゆっくりとしゃがみこみ、車の下を覗き込む。
――その瞬間、二本の細い腕が中川の首に絡みついた。
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