33人が本棚に入れています
本棚に追加
***
「中川ーっ!」
夜闇の中に見覚えのある車を見つけ、笹見は慌てて駆け寄った。
そこで彼が見たものは、あまりに認めたくない現実だった。
「中川……嘘だろ?」
停車した車の傍らに転がっていたのは、見慣れた部下の変わり果てた姿。
詩織と同じように首を折られて転がる、中川の遺体だった。
「中川……中川……くそ、くそぉぉっ!」
もう動かない部下の身体を抱き起こし、笹見は怒りの雄叫びをあげた。
――何が、犯人をでっち上げるだ。
――何が、市民の不安を払拭するためだ。
大事な人間を殺されておきながら、適当な人間に裁きを与えてお茶を濁すなど、できようはずがない。
絶対に、絶対に許さない。
相手が人間だろうと幽霊だろうと妖怪だろうと宇宙人だろうと関係ない。
必ずこの手で、引導を渡してやる。
笹見は、心の中で静かな誓いを立てた。
最初のコメントを投稿しよう!