嘲る女

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結局、柴田の家から逃げるように去った大石達は、くすぶる気持ちに整理をつけられぬまま、大石の自宅で疲れ切った表情を浮かべていた。 テーブルに用意されたお茶を啜りながら、重苦しい沈黙の中で誰かが言葉を発するのを待っている。 何かを、何かをしなければならない。 前に進まなければならない。 しかし、進めば進むほど、そびえ立つ死に近付いてしまう。 では、いったいどうすればいいのか。 誰も、答えを出すことはできなかった。 「……便所行くわ」 不意に、榊原が立ち上がり、部屋を出て行く。 息が詰まりそうな部屋に残された大石と彩芽。 その時、彩芽が不意に大石に寄り添った。
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